双極性障害とは、気分が大きく落ち込む「うつ状態」と、気分が高ぶって活動量が増える「躁状態」または「軽躁状態」を繰り返す精神疾患です。以前は躁うつ病とも呼ばれていました。単なる気分の浮き沈みや性格の問題ではなく、睡眠、仕事、人間関係、お金の使い方、判断力、生活リズムにまで影響が出る病気です。本人がつらさを自覚しやすいのはうつ状態ですが、周囲が異変に気づきやすいのは躁状態や軽躁状態の時期です。双極性障害の症状を理解するには、この両方の波を分けて見る必要があります。
双極性障害のうつ状態では、気分の落ち込み、興味や喜びの低下、疲れやすさ、集中力の低下、食欲や睡眠の乱れ、自分を責める気持ちなどが出やすくなります。朝起きられない、仕事や家事に手がつかない、人と会うのがつらい、将来を悲観してしまうなど、日常生活にも深く影響します。この時期だけを見ると、うつ病と見分けがつきにくいことがあります。そのため、過去に眠らなくても元気だった時期、急に活動的になった時期、浪費や衝動的な行動が増えた時期がなかったかを振り返ることが大切です。
うつ状態の症状は、外から見ると「元気がない」「怠けている」「やる気が足りない」と誤解されることがあります。しかし本人の内側では、体が重い、頭が働かない、何をしても楽しくない、些細な判断さえ苦しいといった状態が続いていることがあります。好きだった趣味に関心が持てない、返信ができない、入浴や食事が負担になる、部屋の片づけができないなど、生活の細かい部分にも影響が出ます。責められるほど本人はさらに自分を追い込みやすくなるため、周囲の理解が重要です。
躁状態では、気分が異常に高ぶる、怒りっぽくなる、睡眠時間が短くても平気に感じる、話し続ける、考えが次々に浮かぶ、自信が過剰になる、普段ならしない大きな買い物や大胆な行動をする、といった変化が見られます。本人は「調子が良い」「頭が冴えている」「今なら何でもできる」と感じているため、病気の症状だと気づきにくいことがあります。周囲が心配して止めようとしても、「邪魔された」「理解されていない」と受け取ってしまうこともあります。
躁状態で特に注意したいのは、判断力の低下です。大きな契約を急に決める、収入に見合わない買い物をする、投資やギャンブルにのめり込む、仕事を抱え込みすぎる、人間関係で強い言葉を使う、普段なら避けるリスクの高い行動を取るなど、あとから生活に大きな影響が残ることがあります。その瞬間は自信に満ちていても、気分が落ち着いたあとに後悔が押し寄せ、うつ状態を悪化させる原因になることもあります。
軽躁状態は、躁状態ほど激しくないため見逃されやすい症状です。睡眠時間が短くなっても元気、仕事が進む、会話が増える、外出したくなる、アイデアが次々に出る、普段より社交的になるなど、一見すると良い変化に見えることがあります。本人も「やっと本来の自分に戻った」と感じるかもしれません。しかし、軽躁状態のあとに強いうつ状態が来る人もいます。調子が良い時期が本当に安定なのか、それとも波の一部なのかを見極めるには、睡眠時間、活動量、発言の勢い、支出、対人トラブルの有無を合わせて見る必要があります。
双極性障害では、躁状態とうつ状態がはっきり分かれて出る人もいれば、イライラ、焦燥感、不眠、落ち込み、衝動性が混ざったように見える人もいます。気分が高ぶっているのに苦しい、活動量は増えているのに不安が強い、怒りっぽさと自己嫌悪が同時に出るなど、本人にも説明しにくい状態になることがあります。周囲からは「元気なのか落ち込んでいるのかわからない」と見えるかもしれませんが、本人の内側ではかなり消耗していることがあります。
双極性障害の症状で見逃されやすいのが、睡眠の変化です。うつ状態では眠れない、または寝ても寝ても眠いという形で現れることがあります。躁状態や軽躁状態では、睡眠時間が短くても疲れを感じにくくなります。「寝る時間がもったいない」「徹夜でも平気」「深夜まで作業しても翌日動ける」と感じる時期があるなら、気分の波を確認する材料になります。睡眠は気分の安定に深く関わるため、双極性障害と向き合ううえで欠かせない観察ポイントです。
もう一つの重要なサインは、周囲からの指摘です。本人は変化に気づいていなくても、家族や友人、職場の人が「最近話す量が増えた」「怒りっぽくなった」「お金の使い方が急に変わった」「急に予定を詰め込みすぎている」と感じていることがあります。反対に、うつ状態では「連絡が減った」「表情が暗い」「遅刻や欠勤が増えた」「以前楽しんでいたことに反応しなくなった」と見えることもあります。双極性障害の症状は本人の主観だけでは見落とされやすいため、周囲の観察も重要な情報になります。
双極性障害には、はっきりした躁状態がある双極I型と、軽躁状態とうつ状態が中心となる双極II型があります。双極II型は激しい躁状態が目立たないため、長くうつ病として扱われることがあります。もちろん、自己判断で病名を決めるのは危険です。ただ、「落ち込みだけでは説明できない時期がある」「急に活動量が増えたあとに強い落ち込みが来る」「周囲からテンションの高さや言動の変化を指摘されたことがある」なら、受診時にその経過を具体的に伝えて下さい。診断では、今の状態だけでなく、過去の気分の波を丁寧に確認することが大切です。
治療や相談につなげるためには、症状を記録しておくと役立ちます。気分、睡眠時間、服薬、仕事量、飲酒、ストレス、対人トラブル、支出、衝動的な行動などを簡単にメモしておくと、自分の波のパターンが見えやすくなります。毎日長く書く必要はありません。気分を数字で記録するだけでも、あとから医師に説明しやすくなります。本人が「普通だと思っていた時期」に、実は睡眠時間が極端に短くなっていた、予定を詰め込みすぎていた、と気づくこともあります。
双極性障害の症状について、暮らしの中での向き合い方や心の整え方をさらに幅広く知りたい人は、ジョーくんのブログも参考にして下さい。ただし、強い落ち込みが続く、自分を傷つけたい気持ちがある、眠らなくても動き続けてしまう、家族や職場とのトラブルが急に増えたなどの変化があるときは、ブログ情報だけで判断せず、精神科や心療内科、地域の相談窓口につながって下さい。双極性障害は、早く気づき、適切な治療と支援を受けるほど、生活への影響を小さくしやすくなります。
双極性障害の症状は、本人の弱さや甘えではありません。心身のリズム、脳の働き、ストレス、環境、体質などが複雑に関係しながら、気分の波として現れる病気です。大切なのは、自分を責め続けることではなく、症状を知り、波を記録し、相談できる人や医療機関とつながることです。うつ状態の苦しさも、躁状態のあとに残る後悔も、ひとりで抱え込む必要はありません。症状を正しく理解することは、振り回される日々から少しずつ距離を取るための出発点になります。